常習累犯窃盗罪で起訴された知的障がい者  福祉の限界か、社会の共存か   京都

おそらく このブログをお読みのかたの周辺にも少なからずいるはずです。

知的障がいをもっているかたを。

私の家のすぐ近くにも 知的障がい者授産施設がありますので、

朝夕と家の横の道路を通っていきます。 

元気に挨拶をする人もいれば、何かにおびえて人を避けている人もいます。
 
自衛でしょうか、常にバットを持っている人もいます。 

 
知的障がいのある男性(36)が 、車の盗難を繰り返す「常習累犯窃盗罪」で起訴されました。
 
 知能指数が25で、4歳の子と同じレベルという彼。

「罪の意識」をどこまで認識できたのか、

また これから「どうやって」 彼に福祉・介護は、社会の規範を身につけさせるのか、

それとも福祉介護の限界なのか、社会での共存はできるのか 問わせる事件です。









 産経新聞 4月16日(水)12時0分配信

「IQ25」の被告、見つからぬ社会の“居場所”…刑罰か福祉か


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140415-00000553-san-soci


 
 常習累犯窃盗罪で起訴された知的障害のある男(36)の弁護人、西田祐馬弁護士(京都弁護士会)は、京都地裁が無罪とした平成25年の自動車盗事件でも弁護を担当していた。



 当初は「車を運転したのはだめだよ」と言うと、男は「ぶっとばすぞ」とすごんでくることもあった。徐々に意思疎通ができるようになり、法廷でも「ごめんなさい」と謝罪した。



 ただ、どこまで罪の意識を持って謝るのか、いまだに分からない。許してもらえることを学習し、条件反射で謝っているようにも見える。怒られると分かっていながら、自動車盗を繰り返している節もある。



 だからこそ、男に刑事責任能力がないと確信して弁護を引き受けているが、これまで福祉関係者の苦労や地域社会の不安とつぶさに接してきただけに、苦悩は深い。西田弁護士は言う。



 「彼のように再犯を繰り返す障害者を社会の中でどう位置づけ、どう処遇すべきかは、非常に難しい」



知能指数は25



 男は京都地裁での精神鑑定によって知能指数25と判定された。厚生労働省の基準では、4段階のうち2番目に重い「重度」の知的障害者だ。



 法務省矯正統計によると、24年の新規受刑者2万4780人のうち、知的障害の疑いがあるとされる知能指数70未満の人は5214人。全体の21%だ。



 一方、厚生労働省の23年度の推計では、全国の知的障害者数は74万1千人。先の法務省統計と照らせば、犯罪者は0・7%にすぎない。知的障害者が犯罪をする傾向にあるわけでは、決してないのだ。



■社会にいるという認識はあるのか



 「累犯障害者」への刑罰をめぐっては、専門家の間でも意見が分かれている。



 元最高検検事の土本武司・筑波大名誉教授(刑事法)は「再犯の可能性が高ければ、安易に社会に戻すことこそ無責任。障害のみを理由に犯罪を見過ごしてはならない」と指摘する。



 石塚伸一龍谷法科大学院教授(刑事法)は「善悪の区別がつかなければ刑法の範囲外。後見人をつけるなど福祉による監督強化と、本人の努力が必要だ」とした上で「刑務所に閉じ込めるという発想ではなく社会が寛容に受け入れることが望ましい」と語る。



 「累犯障害者」(新潮文庫)の著者で元衆院議員の山本譲司氏は、男の犯罪をこう分析した。



 「必ずしも知的障害が原因でなく、生育歴や彼自身のこだわりが誘発している可能性が高い。彼には社会からの疎外感があるか、そもそも社会にいるという認識さえないのではないか」



 山本氏は、民間企業が運営に参加するPFI刑務所で、知的障害や精神障害のある受刑者向けに怒りのコントロールやコミュニケーション能力を高める教育に取り組む。刑罰と福祉のはざまで、社会への順応を後押しする可能性を模索する試みだ。



 出所後も福祉による保護を十分に受けないまま再犯を重ねる累犯障害者。悪循環を断ち切る手がかりはあるのか。山本氏は言う。



 「少なくとも、刑罰と福祉の両方を改善することが事件の教訓ではないか」(鈴木俊輔、永山準、吉国在、小野木康雄)






 

 産経新聞 4月15日(火)12時10分配信

法廷で叫んだ「おれ、めんきょとってくるまかう」…福祉も限界


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140414-00000524-san-soci


   
 「おれ、めんきょとってくるまかう」



 平成25年7月26日、京都地裁。裁判官から「最後に何か言いたいことは」と促されると、男(36)は体を震わせて叫んだ。直前に「くるまやさん、ごめんなさい」と述べた謝罪の言葉よりも大きな声だった。



 当時、男は自動車販売会社の展示場で軽乗用車を盗んだとして逮捕、起訴されていた。罪名は常習累犯窃盗罪。10年間で3回以上、窃盗罪などで懲役刑を受け、さらに同じ犯罪を繰り返すと適用される。



 だが、8月30日に言い渡された判決は無罪(求刑懲役3年)だった。自動車盗が「悪いこと」だと表面上は分かっているが、「社会から許されない違法行為とは真に理解しておらず、自制できなかった」と判断されたのだ。



 知的障害だけを理由に、刑罰を科さない「心神喪失」を認めた異例の判決。刑罰を軽くする「心神耗弱」が妥当とみる検察側は、控訴している。



◆無罪に慌てる



 男を支える福祉関係者は、無罪をどう受け止めたのか。ある福祉施設の職員は意外な事実を明かした。「実刑で刑務所に入ると思っていた。無罪が出たので慌てて支援態勢を作った」



 作業所や介護施設には、他の利用者の安全などを理由に男のような「累犯障害者」の受け入れを断る所も多い。この職員は支援者を探し、6つの施設から協力を取りつけたという。



 職員が男と初めて出会ったのは約3年前、別の罪で服役を終えて出所する直前だった。車好きだと知り、「乗るためには免許が必要だよ」と根気よく教えてきた。行動範囲にある自動車販売店を訪ね、うまく自己紹介できない男に代わって手作りの冊子を持参した。車を盗ませない環境をつくるためだ。近所に名刺を配り、トラブルの際は連絡するよう頼んだこともある。



 「福祉が継続して関わり、人間らしい生活を送らせれば、本人は変わるはずだと信じている。でも、私たちも答えが分からないまま支援を続けてきた」。職員は苦渋をにじませる。



◆「無罪にならないほうが…」



 無罪判決から約半年。男がまたも自動車盗を働いた2月22日は土曜だった。通所施設の作業所は休みで、食事を作るホームヘルパーは朝夕しか来ない。特に昼間は関係者の目が届かない空白の時間帯だった。



 この間、男の生活態度に改善の兆候がみられていただけに、福祉関係者の戸惑いは深まった。



 逮捕後、福祉関係者らが今後の支援を協議した際、「自宅に住まわせず、入所施設で面倒を見た方がいいのでは」という意見も上がった。だが、男は自宅で暮らす希望が強く、施設入所を強いれば問題行動を誘発するおそれもある。結局、結論はまとまらなかった。



 男を隔離することなく、地域に居場所をつくる方法はないのか。関係者が絞り出した言葉は図らずも福祉の「限界」を示していた。



 「罪を罪として償うためにも、地域に納得してもらうためにも、今回は無罪にならない方がいいのかもしれない」












産経新聞  2014.4.14 12:00

精神年齢「4歳」…「刑罰」を理解できない累犯障害者

http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/140414/evt14041412000012-n1.html



 
 【累犯障害者】(上)



 過去の刑罰も、福祉の努力も、犯罪防止にはつながらなかった。「累犯障害者」に必要な支援とは何か。周囲はどう対応するべきなのか。京都で起きた窃盗事件から考えた。



        ◇



 重度の知的障害を理由に心神喪失状態だったとして、一度は無罪とされた京都市内の男(36)が3月14日、同じ自動車盗を繰り返したとする常習累犯(るいはん)窃盗罪で起訴された。男は、出所後すぐに罪を犯して服役することを4、5回繰り返した「累犯障害者」だった。



「車見てたら欲しくなる」
 今回の犯行は京都市内にある自動車販売会社の整備工場が舞台だった。2月22日午後、事務所で昼休みをとっていた男性工員(22)は、聞こえるはずのないエンジン音を耳にした。



 窓越しに外を見ると、さっきまで整備していた中古車(20万円)が向きを変え、エンジンが空ぶかしになっている。だれかがギアを入れずにアクセルを踏み込んでいるらしい。ほどなく男が降りてきて、傍らの自転車に乗り換えると、車を置いたまま走り去った。



 男からは、慌てたそぶりがうかがえなかった。去り際には目も合った。なのに顔色一つ変えず、何かをつぶやくだけだったという。



 京都府警はすぐに付近を捜索し、自宅近くで自転車に乗っていた男を発見。所持品から物証となるエンジンキーが見つかり、窃盗容疑で緊急逮捕した。



 男は「車を見てたら欲しくなる」と供述した。直近の犯行で無罪放免となった「心神喪失者」の立件に踏み切った府警。「被害届が出ている事件。放っておけない」。捜査関係者は淡々と語った。



■再発防止に役立たなかった「無罪」
 男は、重度の知的障害というハンディを背負っている。文字はひらがなしか書けず、数字は9、10ぐらいまでしか数えられない。前回の自動車盗は、精神年齢が「4歳7カ月」という鑑定結果に基づき平成25年8月、京都地裁で無罪が言い渡された。



 検察幹部は語る。「施設に入れるならともかく、無罪は再発防止に役立たなかった。あのときの裁判官はどう思ってるだろうね」



 知的障害者が絡む事件では、検察にも苦い記憶がある。22年11月、大阪地検支部が、放火事件で知的障害のある男性を起訴しながら有罪立証が著しく困難だとして公判前に取り消し、釈放した。知的障害者は取調官に迎合して真実ではない自白をすることがある。男性は言葉の表現能力に問題があった。同支部は、供述を誘導したと疑われれば公判がもたない、と判断せざるを得なかった。



 自動車盗の男は短い質問なら理解でき、意思疎通も図れるという。京都地検は取り調べの録音・録画を行い、万全を期して起訴した。人けのない機会を狙ったことなどを理由に「責任能力があった」と判断したとみられる。



 従来と同じ刑事手続き。この先、男は「罪の意識」を深められるのだろうか。



■罰を罰として理解できない
 「近所中が迷惑してるんです」。近くに住む男性(81)は、半ばあきらめ顔でそう話した。



 男は、母親と2人で京都市内の公営住宅に住んでいる。ペットが禁止されているのに犬を飼い、当番が回ってきても共有スペースの掃除をしない。話しかけても、「うん」ぐらいしか答えがない。



 噂が噂を呼び、男が塀の内と外を行き来してきたことが知れ渡った。実際、20歳を過ぎてからは、刑務所で暮らさなかった日がほとんどなかった。近所の男性(79)は「刑務所から出てくると、みんな『心配やな』って言います」。今回の事件で周囲の不安は増幅し、男との間にますます大きな溝ができている。



 ただ、普段から接している福祉関係者の証言からは男の別の横顔が浮かぶ。作業所のある通所施設に毎日通い、ちらしのポスティングやねじ回しといった仕事を黙々とこなしていた。根深い犯罪傾向がやわらいだと感じていたというのだ。



 福祉関係者はこう明かした。「彼は、罰を罰として理解できないだけだ」



累犯障害者
 再犯を重ねる障害者のこと。刑務所を出所した後で犯罪に手を染め、刑務所に戻ることを繰り返す知的障害者を指す場合が多い。平成18年度の厚生労働省研究班による調査では、服役中の知的障害者の約7割が再犯者とされている。同年に元衆議院議員山本譲司氏が同名の著書を出版し、社会問題になった。









産経新聞  2014.4.16 12:00

「IQ25」の被告、見つからぬ社会の“居場所”…刑罰か福祉か

http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/140416/evt14041612000001-n1.html



  
 【累犯障害者】(下)



 常習累犯窃盗罪で起訴された知的障害のある男(36)の弁護人、西田祐馬弁護士(京都弁護士会)は、京都地裁が無罪とした平成25年の自動車盗事件でも弁護を担当していた。



 当初は「車を運転したのはだめだよ」と言うと、男は「ぶっとばすぞ」とすごんでくることもあった。徐々に意思疎通ができるようになり、法廷でも「ごめんなさい」と謝罪した。



 ただ、どこまで罪の意識を持って謝るのか、いまだに分からない。許してもらえることを学習し、条件反射で謝っているようにも見える。怒られると分かっていながら、自動車盗を繰り返している節もある。



 だからこそ、男に刑事責任能力がないと確信して弁護を引き受けているが、これまで福祉関係者の苦労や地域社会の不安とつぶさに接してきただけに、苦悩は深い。西田弁護士は言う。



 「彼のように再犯を繰り返す障害者を社会の中でどう位置づけ、どう処遇すべきかは、非常に難しい」



知能指数は25



 男は京都地裁での精神鑑定によって知能指数25と判定された。厚生労働省の基準では、4段階のうち2番目に重い「重度」の知的障害者だ。



 法務省矯正統計によると、24年の新規受刑者2万4780人のうち、知的障害の疑いがあるとされる知能指数70未満の人は5214人。全体の21%だ。



 一方、厚生労働省の23年度の推計では、全国の知的障害者数は74万1千人。先の法務省統計と照らせば、犯罪者は0・7%にすぎない。知的障害者が犯罪をする傾向にあるわけでは、決してないのだ。



■社会にいるという認識はあるのか



 「累犯障害者」への刑罰をめぐっては、専門家の間でも意見が分かれている。



 元最高検検事の土本武司・筑波大名誉教授(刑事法)は「再犯の可能性が高ければ、安易に社会に戻すことこそ無責任。障害のみを理由に犯罪を見過ごしてはならない」と指摘する。



 石塚伸一龍谷法科大学院教授(刑事法)は「善悪の区別がつかなければ刑法の範囲外。後見人をつけるなど福祉による監督強化と、本人の努力が必要だ」とした上で「刑務所に閉じ込めるという発想ではなく社会が寛容に受け入れることが望ましい」と語る。



 「累犯障害者」(新潮文庫)の著者で元衆院議員の山本譲司氏は、男の犯罪をこう分析した。



 「必ずしも知的障害が原因でなく、生育歴や彼自身のこだわりが誘発している可能性が高い。彼には社会からの疎外感があるか、そもそも社会にいるという認識さえないのではないか」



 山本氏は、民間企業が運営に参加するPFI刑務所で、知的障害や精神障害のある受刑者向けに怒りのコントロールやコミュニケーション能力を高める教育に取り組む。刑罰と福祉のはざまで、社会への順応を後押しする可能性を模索する試みだ。



 出所後も福祉による保護を十分に受けないまま再犯を重ねる累犯障害者。悪循環を断ち切る手がかりはあるのか。山本氏は言う。



 「少なくとも、刑罰と福祉の両方を改善することが事件の教訓ではないか」



 ◇



 連載は鈴木俊輔、永山準、吉国在、小野木康雄が担当しました。