認知症で電車事故 妻に賠償命令 愛知県大府市 問題点は奥が深い
7年前、愛知県大府市で認知症の91歳の男性が JRの電車にはねられて死亡しました。
JR東海側が事故による影響を遺族に損害賠償を求める裁判があり、
配偶者である妻に 名古屋高等裁判所は、およそ360万円の支払いを命じました。
内容としては、
当時85歳だった妻については「配偶者として夫を見守って介護する監督義務があったのに、
はいかいを防ぐため、出入り口のセンサーを作動させるなどの措置を取っておらず、
監督が十分でなかった」と判断
この裁判の内容は、金銭的な問題だけでなく 事故責任の割合を示した事例であり、
問題の本質は、もっと深いところにあるはずです。
この裁判の判決より もっと重大な問題があるはずです。
果たして、当時85歳だった奥さんが老老介護の状態で24時間 夫を見守ることが可能であったのか。
特別養護老人ホーム(特養)入所希望待機者 52万人という現状
政府は施設入所から在宅介護への移行を推進している現状
1人暮らし世帯 21年後に4割近くになる現状
問題点は奥が深い・・・
NHK NEWS WEB 4月24日 19時29分
認知症で電車事故 妻に賠償命令
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140424/k10014006321000.html
7年前、愛知県内で認知症の91歳の男性が電車にはねられて死亡した事故を巡り、
JR側が損害が発生したとして遺族に賠償を求めた裁判で、
2審の名古屋高等裁判所は1審で認定された男性の長男の責任は認めなかったものの、
男性の妻に対しては「夫を監督する義務があるのに十分ではなかった」と判断し、
およそ360万円の支払いを命じました。
平成19年、愛知県大府市のJR共和駅の構内で近く住む認知症の91歳の男性が電車にはねられて死亡し、
JR東海が事故で生じた振り替え輸送の費用など、およそ720万円の賠償を遺族に求めました。
1審は事故は予測できたとして男性の妻と長男の責任を認め、
JR側の主張どおり賠償を命じていました。
24日の2審の判決で、名古屋高等裁判所の長門栄吉裁判長は長男については、
「20年以上も男性と別居して生活していて、監督義務がなかった」として責任は認めませんでした。
これに対し、当時85歳だった妻については
「配偶者として夫を見守って介護する監督義務があったのに、
はいかいを防ぐため、出入り口のセンサーを作動させるなどの措置を取っておらず、
監督が十分でなかった」と判断して責任を認めました。
その一方でJR側の駅での監視も十分でなかったとして、
妻に対し1審で認めた賠償額の半分に当たるおよそ360万円の支払いを命じました。
判決のあと、遺族側の弁護士は報道陣の取材に対し、
「遺族は十分に介護に努めていたと考えているので、判決には納得できない。
今の社会では、認知症の患者の保護について、家族だけに責任を負わせるのではなく、
地域で見守る体制を築くことが必要だと思われるが、判決はその流れに逆行するものだ。
今後、最高裁判所に上告するかどうかは遺族と相談して決めたい」と話しました。
また、判決後に記者会見した「認知症の人と家族の会」の高見国生代表理事は
「介護を行う家族の実態を考えず民法の規定に押し込めるような考え方は納得がいかない。
高齢化が進み、お年寄りどうしの介護が進むなかで、同様のトラブルが起きた場合の救済措置を検討するよう国に求めていきたい」と述べました。
今回の判決について、JR東海の柘植康英社長は記者会見で、
「まだ判決内容を見ていないのでコメントは差し控えたいが、いろいろな損害に対しては請求するということを基本として考えている」と述べました。
専門家は「判決に疑問」
名古屋高等裁判所の判決について、認知症の人とその家族の法律問題に詳しい早稲田大学法学研究科の棚村政行教授は
「1審判決と比較して、長男の責任を認めず、JR側の事故防止の義務を考慮して賠償金の金額を半分にした点は評価できる。
しかし、高齢の妻が自分1人では介護できない状態にもかかわらず、
夫婦としての監督責任を重くみて妻に賠償金の支払いを命じた点には疑問を感じる。
認知症の人が増え続けるなか、国や社会の支援が整わないまま家族の責任を重く判断したことは家での介護を断念する風潮を呼びかねない」と話しています。
NHK NEWS WEB 4月24日 4時06分
認知症男性のJR事故 家族の責任どう判断
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140424/k10013983931000.html
7年前、愛知県大府市で認知症の男性が電車にはねられて死亡した事故で、
JRが遺族に損害賠償を求め、1審で720万円の支払いを遺族に命じた裁判の2審の判決が、
24日、名古屋高等裁判所で言い渡されます。
認知症やその疑いがあって行方不明となる人が年間1万人近くに上るなか、
家族の責任について2審でどのように判断するのか注目されます。
この裁判は、平成19年12月、
愛知県大府市のJR共和駅の構内で近くに住む認知症の91歳の男性が電車にはねられて死亡し、
JR東海が事故で生じた振り替え輸送の費用などの賠償を遺族に求めたものです。
1審は、男性の長男と妻について
「はいかいが予測できたのに防止するための適切な措置を取っていなかった」などとして、
およそ720万円の支払いを命じ、
遺族側が名古屋高等裁判所に控訴しました。
裁判で、遺族側は「24時間、目を離さず介護することは不可能だ」として、
はいかいを完全に防ぐことはできないと主張しています。
認知症やその疑いがあり、はいかいなどで行方不明になったとして警察に届けられた人は、
おととし1年間に全国で1万人近くに上っています。
また、鉄道会社の報告をNHKが分析した結果、
平成17年からの8年余りの間に認知症の人がはいかいするなどして起きた鉄道事故は、
少なくとも76件に上り、このうち64人が死亡したことが分かっています。
こうした事故について、専門家の間には「家族の責任が問われると認知症の人を外出させなくなるおそれがある」という意見もあります。
認知症の人による事故の実態が明らかになってきたなかで、家族が負う責任について2審でどのように判断するのか注目されます。
朝日新聞デジタル 2014年4月24日20時33分
http://www.asahi.com/articles/ASG4S55ZLG4SOIPE01F.html?iref=com_alist_6_05
徘徊(はいかい)中に列車にはねられ、死亡した愛知県大府市の男性(当時91)の遺族に、JR東海が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、名古屋高裁であった。長門栄吉裁判長は、介護に携わった妻と長男に請求通り約720万円の支払いを命じた一審・名古屋地裁の判決を変更し、約359万円に減額して妻に支払いを命じた。長男には見守る義務はなかったとして、JR東海の請求を棄却した。
高齢化に伴い、認知症のお年寄りの在宅介護を国が進めようとしている中、介護現場からは「時代に逆行した判決だ」と批判の声が上がっている。
JR東海は、振り替え輸送費や人件費などとして損害賠償を求めていた。昨年8月の地裁判決は、横浜市に住み、男性の介護方針を決めていた長男に事故を防ぐ責任があったと認定。徘徊して事故に遭う可能性を予測できたのに、見守りを強める責任を果たさなかったと判断した。
男性の妻については、長男が決めた介護方針の中で、男性と2人きりの時に目を離さずにいる義務を負っていたのに怠ったと結論づけた。ほかの親族3人は介護への関わりが乏しいとして責任を認めなかった。
これに対し、高裁判決は相当前から長男は男性と別々に暮らしていて、経済的な扶養義務があったに過ぎず、介護の責任を負う立場になかったとして、男性への請求を退けた。
一方、妻については民法上、配偶者として男性を介護・監督する義務があったと判断。高齢だったものの、家族の助けを受けていて、男性を介護する義務を果たせないとは認められないと判断した。
その上で、徘徊防止のため設置していた出入り口のセンサーを切っていたとして、「監督義務者として、十分ではなかった点がある」とし、事故に対する責任があると結論づけた。
ただ、長門裁判長は、妻の日常の見守りについて「充実した介護態勢を築き、義務を尽くそうと努力していた」と評価。さらにJRの安全管理態勢については「安全性に欠ける点があったとは認められない」としたうえで、「社会的弱者も安全に鉄道を利用できるようにするのが責務だ」と言及。フェンスに施錠したり、駅員が乗客を注意深く監視したりしていれば事故を防ぐことができたとして、「賠償金額は一審の5割が相当」とした。
◇
〈認知症男性の死亡事故〉 愛知県大府市で2007年12月、認知症の男性が徘徊中、JR東海道線共和駅の構内で列車にはねられた。男性は「要介護4」と認定されていた。日常的な介護は、自らも「要介護1」と認定された同居する当時85歳の妻と、介護のために近くに転居してきた長男の妻があたっていた。事故当日、男性は部屋で2人きりだった妻がまどろむ間に外出していた。
東京新聞 2014年4月23日 夕刊
在宅介護を受けていた愛知県大府市の認知症の男性=当時(91)=が二〇〇七年に、徘徊(はいかい)中に列車にはねられて死亡したのは家族が監督を怠ったためとして、
JR東海が運行の遅れなどの損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が二十四日、
名古屋高裁で言い渡される。
一審・名古屋地裁は遺族に事故防止の責任があったと、
請求の全額の約七百二十万円の支払いを命じた。
高齢者の在宅介護の増加が予想される中、家族の責任をどこまで認めるのか、
高裁の判断が注目される。
事故は〇七年十二月七日夕に起きた。
男性はデイサービスから帰宅後、
当時八十五歳の妻が数分間、うたた寝した間に外出。
約一時間後、三キロほど離れた東海道線共和駅の構内で線路に立ち入り、
列車にはねられて死亡した。
男性は要介護4で、「常に介護が必要」と判定されていた。
裁判では、(1)男性が事故に遭うことを予見できたか(2)徘徊を防ぐ対策は十分だったか-の二点が争われた。
JR側は「過去に二度の徘徊歴があり、再び徘徊する可能性は予見できた」と主張。
自宅の出入りを知らせるセンサーを切っていたほか、
妻が目を離した落ち度があると指摘した。
遺族側は「当時は認知症状が安定し、穏やかに生活していた。
今まで徘徊で駅に向かったことはなく、事故は予測できなかった」と反論。
「センサーを切っていたのは、大きな音で男性が精神的に不安定になるため。
横浜市に住む長男の妻が介護のために単身で近所に転居するなど、家族ぐるみで対策をとっていた」と述べた。
昨年八月の一審判決は、徘徊歴や介護状況から「事故は予見できた」と判断。
認知症が進む男性の在宅介護を続けるならば、高齢の妻らによる見守りだけではなく、
ヘルパーを依頼するなどの対策も考えるべきで、「監督する義務を怠らなかったと認めることはできない」と結論付けた。
一審で賠償を命じられたのは、男性の妻と介護方針を決めた長男の二人。
在宅介護を選ぶ家族の責任を重くみた判決は、介護現場に波紋を広げた。
控訴した遺族側は「家族に重い責任を負わせれば在宅介護をちゅうちょすることになり、
介護現場は崩壊する」と訴える。
一方のJR側は「あくまで個別の事案であり、監督義務を適切に果たして介護する家族には何ら影響がない」としている。
中日新聞 2014年4月16日
愛知県大府市の認知症の男性=当時(91)=が電車にはねられたのは家族が見守りを怠ったからだとして、JR東海が遺族に賠償金を求めた訴訟の控訴審判決が二十四日、名古屋高裁で言い渡される。昨年八月、名古屋地裁がJRの請求を全面的に認めた判決は、認知症の人を在宅介護する家族らに衝撃を与えた。家族らの現状と、芽生え始めた地域での見守りを二回に分けて伝える。
◆24時間監視は不可能 社会の支え必要
「夜中でも出ていくので気が休まらない」。認知症の夫(87)と二人で東京・多摩地方に住む女性(80)は語る。
二月下旬の午前四時ごろ、がちゃりと音がして目が覚めた。玄関の鍵を開け、夫が出ていったのだ。既に夫の姿はなく、行き先も分からない。
連絡を受けて捜し回った息子が午前六時、約一キロ離れた駐車場に止めてあった他人の車の中で、震えているのを見つけた。以前、商売をしていた店の駐車場だった。二年前、行方不明になった経験から、ベルトにつける衛星利用測位システム(GPS)端末を市から借り、防犯会社に捜索を頼む対策はしていたが、パジャマでの外出対策は盲点だった。以後、女性は玄関の鍵を二つ増やして三重に。「時間が稼げると思って」
夫が脱出を試みることはないが「いつ出ていくかと思うと心配。判決は人ごとではない」と女性は話す。
「認知症の人と家族の会」石川県支部の井沢恵美子代表(70)は、「認知症の人が出歩くのは必ず目的がある」と指摘。徘徊(はいかい)に悩んだ家族が、自分と認知症の人の手を縄でつなぎ、一緒の布団で寝ていても、縄と施錠を外して出ていった事例や、すべての出入り口に施錠をしたら、小さなトイレの窓から飛び降りた事例もある。
井沢さんは「どんな思いで出ていこうとしているのかを、本人の目線で考えなければいけないが、家族は介護にくたくたでその余裕がない」と話す。
◇
同会三重県支部が昨年十月、津市で開いた会員の集いでも判決が話題に。初期の認知症の六十代の妻を介護する津市の男性(65)は、妻に徘徊の症状はないが毎日、妻が寝るのを見てから床に就き、必ず先に起きる。介護する家族の監督責任を重くみた判決に「プレッシャーはすごくある」と話す。
「施設に入れようにも足りず、入れない」「判決は家族にとって、閉じ込めておけというに等しい」などの意見も出た。
同支部の下野和子代表(62)は「徘徊を百パーセント予見し、二十四時間監視するのは不可能。介護する家族は皆、経験的にそれを知っている。認知症になってもその人らしく生きていくには、地域や社会の支えが必要」と話す。
<認知症列車事故訴訟> 名古屋地裁判決によると、認知症の男性は2007年、同居する当時85歳の妻がまどろんだ間に外出、大府市のJR共和駅の線路に入り、電車にはねられ死亡した。地裁は男性の徘徊を妻や長男は予見できたとして注意義務違反を認め、JR東海が求めた賠償全額約720万円の支払いを命じた。
J-CASTニュース 2013年08月13日18時31分
認知症の男性が電車にはねられたのは見守りを怠ったからだとして、名古屋地裁が判決で、電車遅延などの賠償金約720万円をJR東海に支払うよう遺族に命じたと報じられた。これに対し、ネット上では疑問の声が多数出ている。
遺族への賠償命令を報じたのは、日経の2013年8月10日付記事だ。
名古屋地裁「見守りを怠った」
当時の報道では、91歳だった認知症男性は2007年12月7日夕、愛知県大府市のJR東海道線・共和駅で線路内に立ち入り、快速電車にはねられて死亡した。電車の運転士が男性を発見してブレーキをかけたが、間に合わなかったという。自殺の可能性もあるとされたが、立ち入った経緯ははっきりしていなかった。
日経の記事によると、男性はこの年2月には、常に介護が必要とされる認知症高齢者自立度4と認定されていた。これに対し、JR東海は、安全対策が不十分だったとして、妻と長男を提訴した。裁判では、妻は、当時85歳の高齢のため夫を常時監視できなかったと反論した。しかし、名古屋地裁の上田哲裁判長は13年8月9日、訴えを認めて請求全額を支払うよう2人に求める判決を言い渡した。
その理由として、上田裁判長は、同居の妻が介護ヘルパーを依頼せず、目を離したすきに男性が外出したことを指摘した。また、別居の長男も、事実上の監督者であるにもかかわらず、徘徊防止の適切な措置を取らなかったとした。男性は常に目を離さないようにしていなくてはならず、2人の過失責任は免れないというのだ。
記事がネット上でも配信されると、判決内容に次々と異論が出た。
「遺族には酷な判決だな」「介護ヘルパー24時間入れられる訳じゃないし」「別居してたら監督するの無理じゃね」
中には、駅員が男性を見逃し、立ち入り防止策もされていなかったのではないかなどと、JR東海側の過失を指摘する声も出た。
JR東海は、ネット上のこうした声についてどう考えるのか。
JR東海「損害が発生したのは事実」
ヘルパーをつけても男性を常時監視するのは難しいのではないかとの声について、JR東海の法務部担当者は、取材にこう説明した。
「個別の事情はいろいろおありかもしれませんが、線路に立ち入り、電車に衝突して損害が発生したのは事実です。損害については、原則としてお支払いしていただいています。それは、自殺であるなしに関わらず、同じです」
男性が線路に立ち入ったのは、夕方のラッシュアワー時で、上下線で20本が最大2時間遅れ、34本が運休するなどして約2万7000人に影響した。乗客の代替輸送を手配するなどもしており、担当者は、そうした内容を調べて約720万円という賠償金の額を出したとした。
今回は、支払いに応じてもらえず、熟慮した結果、裁判所の公正な判断を求めることにしたという。
JR東海にも事故を招いた過失があるのではとの指摘については、「当社としては、線路に立ち入らないように巡回したり呼びかけたりしており、過失はなかったと考えています」と反論している。
なお、ある私鉄にJ-CASTニュースが取材したところ、飛び込み自殺による損害額の平均は200万円ほどで、請求は100万円にいかないことが多いと答えていた。一方、過去の新聞報道によると、ラッシュ時で数万人に影響するときは、鉄道会社によっては600~800万円ほどを請求することもあるという。
中日新聞
認知症の男性の事故で鉄道会社に生じた損害を家族が負担すべきかが争われた裁判の控訴審は、妻のみ賠償責任を問われた。認知症が急増する社会に沿った判断か。公的な賠償制度も検討すべきだ。
家族側に全面的賠償を命じた一審の判断は適正か。介護現場の注目を集めた裁判だった。
愛知県大府市で二〇〇七年、認知症の男性=当時(91)=が徘徊(はいかい)中に列車にはねられ死亡し、JR東海が男性の遺族に振り替え輸送代など約七百二十万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は男性の妻(91)と長男(63)に全額支払いを命じた一審判決を変更し、妻に対してのみ約三百六十万円の賠償を命じた。
遠方で暮らす長男への請求を棄却し、新たにJR側に対して、「駅の利用者への監視が不十分だった」などと安全対策の不備に言及し、賠償を半分に減額した。この点は一定評価ができるだろう。
しかし、妻だけであっても、家族に賠償責任を負わせる点は一審と変わらない。民法が定める監督義務者として配偶者の責任は免れないという考え方である。
夫婦が互いに協力し、助け合っていくことが大切なのはもっともだが、配偶者というだけで常に責任を負わされるなら、精神的にも、経済的にも追い詰められる。在宅介護は立ちゆかなくなる。
認知症を患う人は、今や高齢者の七人に一人、予備軍もあわせて四人に一人に上る。高齢者が高齢者を介護する「老老介護」も増え、高齢ながらできる限りの介護に尽くしている人は大勢いる。
事故で亡くなった男性は「要介護4」だった。妻がまどろんだ数分の間に家を出た。
同じような事故はほかでも起こる。認知症の徘徊対策として玄関に開閉センサーをつけても、ヘルパーに頼んでも、行動予測の難しい人を二十四時間、一瞬も目を離さず見守ることは不可能だ。在宅であれ、施設であれ、部屋に閉じ込めることなどできない。
この判決が前例になれば、ほかの事故でも損害賠償裁判で責任を問われる。亡くなる人は被害者でもある。家族だけに賠償を押しつけない、鉄道会社の責務や、社会的な救済制度が考えられるべきだ。保険料は運賃に上乗せし、事故の時は保険から支払われる仕組みがあってもいい。
認知症の事故は列車に限らず、自動車などでも起きる。事故による負担を社会全体で分かち合う、そんなシステムをつくりたい。
JR東海側が事故による影響を遺族に損害賠償を求める裁判があり、
配偶者である妻に 名古屋高等裁判所は、およそ360万円の支払いを命じました。
内容としては、
当時85歳だった妻については「配偶者として夫を見守って介護する監督義務があったのに、
はいかいを防ぐため、出入り口のセンサーを作動させるなどの措置を取っておらず、
監督が十分でなかった」と判断
この裁判の内容は、金銭的な問題だけでなく 事故責任の割合を示した事例であり、
問題の本質は、もっと深いところにあるはずです。
この裁判の判決より もっと重大な問題があるはずです。
果たして、当時85歳だった奥さんが老老介護の状態で24時間 夫を見守ることが可能であったのか。
特別養護老人ホーム(特養)入所希望待機者 52万人という現状
政府は施設入所から在宅介護への移行を推進している現状
1人暮らし世帯 21年後に4割近くになる現状
問題点は奥が深い・・・
NHK NEWS WEB 4月24日 19時29分
認知症で電車事故 妻に賠償命令
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140424/k10014006321000.html
7年前、愛知県内で認知症の91歳の男性が電車にはねられて死亡した事故を巡り、
JR側が損害が発生したとして遺族に賠償を求めた裁判で、
2審の名古屋高等裁判所は1審で認定された男性の長男の責任は認めなかったものの、
男性の妻に対しては「夫を監督する義務があるのに十分ではなかった」と判断し、
およそ360万円の支払いを命じました。
平成19年、愛知県大府市のJR共和駅の構内で近く住む認知症の91歳の男性が電車にはねられて死亡し、
JR東海が事故で生じた振り替え輸送の費用など、およそ720万円の賠償を遺族に求めました。
1審は事故は予測できたとして男性の妻と長男の責任を認め、
JR側の主張どおり賠償を命じていました。
24日の2審の判決で、名古屋高等裁判所の長門栄吉裁判長は長男については、
「20年以上も男性と別居して生活していて、監督義務がなかった」として責任は認めませんでした。
これに対し、当時85歳だった妻については
「配偶者として夫を見守って介護する監督義務があったのに、
はいかいを防ぐため、出入り口のセンサーを作動させるなどの措置を取っておらず、
監督が十分でなかった」と判断して責任を認めました。
その一方でJR側の駅での監視も十分でなかったとして、
妻に対し1審で認めた賠償額の半分に当たるおよそ360万円の支払いを命じました。
判決のあと、遺族側の弁護士は報道陣の取材に対し、
「遺族は十分に介護に努めていたと考えているので、判決には納得できない。
今の社会では、認知症の患者の保護について、家族だけに責任を負わせるのではなく、
地域で見守る体制を築くことが必要だと思われるが、判決はその流れに逆行するものだ。
今後、最高裁判所に上告するかどうかは遺族と相談して決めたい」と話しました。
また、判決後に記者会見した「認知症の人と家族の会」の高見国生代表理事は
「介護を行う家族の実態を考えず民法の規定に押し込めるような考え方は納得がいかない。
高齢化が進み、お年寄りどうしの介護が進むなかで、同様のトラブルが起きた場合の救済措置を検討するよう国に求めていきたい」と述べました。
今回の判決について、JR東海の柘植康英社長は記者会見で、
「まだ判決内容を見ていないのでコメントは差し控えたいが、いろいろな損害に対しては請求するということを基本として考えている」と述べました。
専門家は「判決に疑問」
名古屋高等裁判所の判決について、認知症の人とその家族の法律問題に詳しい早稲田大学法学研究科の棚村政行教授は
「1審判決と比較して、長男の責任を認めず、JR側の事故防止の義務を考慮して賠償金の金額を半分にした点は評価できる。
しかし、高齢の妻が自分1人では介護できない状態にもかかわらず、
夫婦としての監督責任を重くみて妻に賠償金の支払いを命じた点には疑問を感じる。
認知症の人が増え続けるなか、国や社会の支援が整わないまま家族の責任を重く判断したことは家での介護を断念する風潮を呼びかねない」と話しています。
NHK NEWS WEB 4月24日 4時06分
認知症男性のJR事故 家族の責任どう判断
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140424/k10013983931000.html
7年前、愛知県大府市で認知症の男性が電車にはねられて死亡した事故で、
JRが遺族に損害賠償を求め、1審で720万円の支払いを遺族に命じた裁判の2審の判決が、
24日、名古屋高等裁判所で言い渡されます。
認知症やその疑いがあって行方不明となる人が年間1万人近くに上るなか、
家族の責任について2審でどのように判断するのか注目されます。
この裁判は、平成19年12月、
愛知県大府市のJR共和駅の構内で近くに住む認知症の91歳の男性が電車にはねられて死亡し、
JR東海が事故で生じた振り替え輸送の費用などの賠償を遺族に求めたものです。
1審は、男性の長男と妻について
「はいかいが予測できたのに防止するための適切な措置を取っていなかった」などとして、
およそ720万円の支払いを命じ、
遺族側が名古屋高等裁判所に控訴しました。
裁判で、遺族側は「24時間、目を離さず介護することは不可能だ」として、
はいかいを完全に防ぐことはできないと主張しています。
認知症やその疑いがあり、はいかいなどで行方不明になったとして警察に届けられた人は、
おととし1年間に全国で1万人近くに上っています。
また、鉄道会社の報告をNHKが分析した結果、
平成17年からの8年余りの間に認知症の人がはいかいするなどして起きた鉄道事故は、
少なくとも76件に上り、このうち64人が死亡したことが分かっています。
こうした事故について、専門家の間には「家族の責任が問われると認知症の人を外出させなくなるおそれがある」という意見もあります。
認知症の人による事故の実態が明らかになってきたなかで、家族が負う責任について2審でどのように判断するのか注目されます。
朝日新聞デジタル 2014年4月24日20時33分
認知症で徘徊し線路で事故、遺族の賠償減額 名古屋高裁
http://www.asahi.com/articles/ASG4S55ZLG4SOIPE01F.html?iref=com_alist_6_05
徘徊(はいかい)中に列車にはねられ、死亡した愛知県大府市の男性(当時91)の遺族に、JR東海が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、名古屋高裁であった。長門栄吉裁判長は、介護に携わった妻と長男に請求通り約720万円の支払いを命じた一審・名古屋地裁の判決を変更し、約359万円に減額して妻に支払いを命じた。長男には見守る義務はなかったとして、JR東海の請求を棄却した。
高齢化に伴い、認知症のお年寄りの在宅介護を国が進めようとしている中、介護現場からは「時代に逆行した判決だ」と批判の声が上がっている。
JR東海は、振り替え輸送費や人件費などとして損害賠償を求めていた。昨年8月の地裁判決は、横浜市に住み、男性の介護方針を決めていた長男に事故を防ぐ責任があったと認定。徘徊して事故に遭う可能性を予測できたのに、見守りを強める責任を果たさなかったと判断した。
男性の妻については、長男が決めた介護方針の中で、男性と2人きりの時に目を離さずにいる義務を負っていたのに怠ったと結論づけた。ほかの親族3人は介護への関わりが乏しいとして責任を認めなかった。
これに対し、高裁判決は相当前から長男は男性と別々に暮らしていて、経済的な扶養義務があったに過ぎず、介護の責任を負う立場になかったとして、男性への請求を退けた。
一方、妻については民法上、配偶者として男性を介護・監督する義務があったと判断。高齢だったものの、家族の助けを受けていて、男性を介護する義務を果たせないとは認められないと判断した。
その上で、徘徊防止のため設置していた出入り口のセンサーを切っていたとして、「監督義務者として、十分ではなかった点がある」とし、事故に対する責任があると結論づけた。
ただ、長門裁判長は、妻の日常の見守りについて「充実した介護態勢を築き、義務を尽くそうと努力していた」と評価。さらにJRの安全管理態勢については「安全性に欠ける点があったとは認められない」としたうえで、「社会的弱者も安全に鉄道を利用できるようにするのが責務だ」と言及。フェンスに施錠したり、駅員が乗客を注意深く監視したりしていれば事故を防ぐことができたとして、「賠償金額は一審の5割が相当」とした。
◇
〈認知症男性の死亡事故〉 愛知県大府市で2007年12月、認知症の男性が徘徊中、JR東海道線共和駅の構内で列車にはねられた。男性は「要介護4」と認定されていた。日常的な介護は、自らも「要介護1」と認定された同居する当時85歳の妻と、介護のために近くに転居してきた長男の妻があたっていた。事故当日、男性は部屋で2人きりだった妻がまどろむ間に外出していた。
東京新聞 2014年4月23日 夕刊
介護の家族 責任どこまで 認知症男性の列車事故 あす高裁判決
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014042302000232.html在宅介護を受けていた愛知県大府市の認知症の男性=当時(91)=が二〇〇七年に、徘徊(はいかい)中に列車にはねられて死亡したのは家族が監督を怠ったためとして、
JR東海が運行の遅れなどの損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が二十四日、
名古屋高裁で言い渡される。
一審・名古屋地裁は遺族に事故防止の責任があったと、
請求の全額の約七百二十万円の支払いを命じた。
高齢者の在宅介護の増加が予想される中、家族の責任をどこまで認めるのか、
高裁の判断が注目される。
事故は〇七年十二月七日夕に起きた。
男性はデイサービスから帰宅後、
当時八十五歳の妻が数分間、うたた寝した間に外出。
約一時間後、三キロほど離れた東海道線共和駅の構内で線路に立ち入り、
列車にはねられて死亡した。
男性は要介護4で、「常に介護が必要」と判定されていた。
裁判では、(1)男性が事故に遭うことを予見できたか(2)徘徊を防ぐ対策は十分だったか-の二点が争われた。
JR側は「過去に二度の徘徊歴があり、再び徘徊する可能性は予見できた」と主張。
自宅の出入りを知らせるセンサーを切っていたほか、
妻が目を離した落ち度があると指摘した。
遺族側は「当時は認知症状が安定し、穏やかに生活していた。
今まで徘徊で駅に向かったことはなく、事故は予測できなかった」と反論。
「センサーを切っていたのは、大きな音で男性が精神的に不安定になるため。
横浜市に住む長男の妻が介護のために単身で近所に転居するなど、家族ぐるみで対策をとっていた」と述べた。
昨年八月の一審判決は、徘徊歴や介護状況から「事故は予見できた」と判断。
認知症が進む男性の在宅介護を続けるならば、高齢の妻らによる見守りだけではなく、
ヘルパーを依頼するなどの対策も考えるべきで、「監督する義務を怠らなかったと認めることはできない」と結論付けた。
一審で賠償を命じられたのは、男性の妻と介護方針を決めた長男の二人。
在宅介護を選ぶ家族の責任を重くみた判決は、介護現場に波紋を広げた。
控訴した遺族側は「家族に重い責任を負わせれば在宅介護をちゅうちょすることになり、
介護現場は崩壊する」と訴える。
一方のJR側は「あくまで個別の事案であり、監督義務を適切に果たして介護する家族には何ら影響がない」としている。
中日新聞 2014年4月16日
<認知症事故訴訟>(上) 介護の家族ら動揺と不安
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2014041602000003.html愛知県大府市の認知症の男性=当時(91)=が電車にはねられたのは家族が見守りを怠ったからだとして、JR東海が遺族に賠償金を求めた訴訟の控訴審判決が二十四日、名古屋高裁で言い渡される。昨年八月、名古屋地裁がJRの請求を全面的に認めた判決は、認知症の人を在宅介護する家族らに衝撃を与えた。家族らの現状と、芽生え始めた地域での見守りを二回に分けて伝える。
◆24時間監視は不可能 社会の支え必要
「夜中でも出ていくので気が休まらない」。認知症の夫(87)と二人で東京・多摩地方に住む女性(80)は語る。
二月下旬の午前四時ごろ、がちゃりと音がして目が覚めた。玄関の鍵を開け、夫が出ていったのだ。既に夫の姿はなく、行き先も分からない。
連絡を受けて捜し回った息子が午前六時、約一キロ離れた駐車場に止めてあった他人の車の中で、震えているのを見つけた。以前、商売をしていた店の駐車場だった。二年前、行方不明になった経験から、ベルトにつける衛星利用測位システム(GPS)端末を市から借り、防犯会社に捜索を頼む対策はしていたが、パジャマでの外出対策は盲点だった。以後、女性は玄関の鍵を二つ増やして三重に。「時間が稼げると思って」
夫が脱出を試みることはないが「いつ出ていくかと思うと心配。判決は人ごとではない」と女性は話す。
「認知症の人と家族の会」石川県支部の井沢恵美子代表(70)は、「認知症の人が出歩くのは必ず目的がある」と指摘。徘徊(はいかい)に悩んだ家族が、自分と認知症の人の手を縄でつなぎ、一緒の布団で寝ていても、縄と施錠を外して出ていった事例や、すべての出入り口に施錠をしたら、小さなトイレの窓から飛び降りた事例もある。
井沢さんは「どんな思いで出ていこうとしているのかを、本人の目線で考えなければいけないが、家族は介護にくたくたでその余裕がない」と話す。
◇
同会三重県支部が昨年十月、津市で開いた会員の集いでも判決が話題に。初期の認知症の六十代の妻を介護する津市の男性(65)は、妻に徘徊の症状はないが毎日、妻が寝るのを見てから床に就き、必ず先に起きる。介護する家族の監督責任を重くみた判決に「プレッシャーはすごくある」と話す。
「施設に入れようにも足りず、入れない」「判決は家族にとって、閉じ込めておけというに等しい」などの意見も出た。
同支部の下野和子代表(62)は「徘徊を百パーセント予見し、二十四時間監視するのは不可能。介護する家族は皆、経験的にそれを知っている。認知症になってもその人らしく生きていくには、地域や社会の支えが必要」と話す。
<認知症列車事故訴訟> 名古屋地裁判決によると、認知症の男性は2007年、同居する当時85歳の妻がまどろんだ間に外出、大府市のJR共和駅の線路に入り、電車にはねられ死亡した。地裁は男性の徘徊を妻や長男は予見できたとして注意義務違反を認め、JR東海が求めた賠償全額約720万円の支払いを命じた。
J-CASTニュース 2013年08月13日18時31分
認知症で電車にはねられ遺族に720万円賠償命令 「酷な判決だな」とネットで疑問相次ぐ
http://news.livedoor.com/article/detail/7950854/認知症の男性が電車にはねられたのは見守りを怠ったからだとして、名古屋地裁が判決で、電車遅延などの賠償金約720万円をJR東海に支払うよう遺族に命じたと報じられた。これに対し、ネット上では疑問の声が多数出ている。
遺族への賠償命令を報じたのは、日経の2013年8月10日付記事だ。
名古屋地裁「見守りを怠った」
当時の報道では、91歳だった認知症男性は2007年12月7日夕、愛知県大府市のJR東海道線・共和駅で線路内に立ち入り、快速電車にはねられて死亡した。電車の運転士が男性を発見してブレーキをかけたが、間に合わなかったという。自殺の可能性もあるとされたが、立ち入った経緯ははっきりしていなかった。
日経の記事によると、男性はこの年2月には、常に介護が必要とされる認知症高齢者自立度4と認定されていた。これに対し、JR東海は、安全対策が不十分だったとして、妻と長男を提訴した。裁判では、妻は、当時85歳の高齢のため夫を常時監視できなかったと反論した。しかし、名古屋地裁の上田哲裁判長は13年8月9日、訴えを認めて請求全額を支払うよう2人に求める判決を言い渡した。
その理由として、上田裁判長は、同居の妻が介護ヘルパーを依頼せず、目を離したすきに男性が外出したことを指摘した。また、別居の長男も、事実上の監督者であるにもかかわらず、徘徊防止の適切な措置を取らなかったとした。男性は常に目を離さないようにしていなくてはならず、2人の過失責任は免れないというのだ。
記事がネット上でも配信されると、判決内容に次々と異論が出た。
「遺族には酷な判決だな」「介護ヘルパー24時間入れられる訳じゃないし」「別居してたら監督するの無理じゃね」
中には、駅員が男性を見逃し、立ち入り防止策もされていなかったのではないかなどと、JR東海側の過失を指摘する声も出た。
JR東海は、ネット上のこうした声についてどう考えるのか。
JR東海「損害が発生したのは事実」
ヘルパーをつけても男性を常時監視するのは難しいのではないかとの声について、JR東海の法務部担当者は、取材にこう説明した。
「個別の事情はいろいろおありかもしれませんが、線路に立ち入り、電車に衝突して損害が発生したのは事実です。損害については、原則としてお支払いしていただいています。それは、自殺であるなしに関わらず、同じです」
男性が線路に立ち入ったのは、夕方のラッシュアワー時で、上下線で20本が最大2時間遅れ、34本が運休するなどして約2万7000人に影響した。乗客の代替輸送を手配するなどもしており、担当者は、そうした内容を調べて約720万円という賠償金の額を出したとした。
今回は、支払いに応じてもらえず、熟慮した結果、裁判所の公正な判断を求めることにしたという。
JR東海にも事故を招いた過失があるのではとの指摘については、「当社としては、線路に立ち入らないように巡回したり呼びかけたりしており、過失はなかったと考えています」と反論している。
なお、ある私鉄にJ-CASTニュースが取材したところ、飛び込み自殺による損害額の平均は200万円ほどで、請求は100万円にいかないことが多いと答えていた。一方、過去の新聞報道によると、ラッシュ時で数万人に影響するときは、鉄道会社によっては600~800万円ほどを請求することもあるという。
中日新聞
【社説】2014年4月28日
認知症事故訴訟 介護への影響は甚大だ
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2014042802000104.html認知症の男性の事故で鉄道会社に生じた損害を家族が負担すべきかが争われた裁判の控訴審は、妻のみ賠償責任を問われた。認知症が急増する社会に沿った判断か。公的な賠償制度も検討すべきだ。
家族側に全面的賠償を命じた一審の判断は適正か。介護現場の注目を集めた裁判だった。
愛知県大府市で二〇〇七年、認知症の男性=当時(91)=が徘徊(はいかい)中に列車にはねられ死亡し、JR東海が男性の遺族に振り替え輸送代など約七百二十万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は男性の妻(91)と長男(63)に全額支払いを命じた一審判決を変更し、妻に対してのみ約三百六十万円の賠償を命じた。
遠方で暮らす長男への請求を棄却し、新たにJR側に対して、「駅の利用者への監視が不十分だった」などと安全対策の不備に言及し、賠償を半分に減額した。この点は一定評価ができるだろう。
しかし、妻だけであっても、家族に賠償責任を負わせる点は一審と変わらない。民法が定める監督義務者として配偶者の責任は免れないという考え方である。
夫婦が互いに協力し、助け合っていくことが大切なのはもっともだが、配偶者というだけで常に責任を負わされるなら、精神的にも、経済的にも追い詰められる。在宅介護は立ちゆかなくなる。
認知症を患う人は、今や高齢者の七人に一人、予備軍もあわせて四人に一人に上る。高齢者が高齢者を介護する「老老介護」も増え、高齢ながらできる限りの介護に尽くしている人は大勢いる。
事故で亡くなった男性は「要介護4」だった。妻がまどろんだ数分の間に家を出た。
同じような事故はほかでも起こる。認知症の徘徊対策として玄関に開閉センサーをつけても、ヘルパーに頼んでも、行動予測の難しい人を二十四時間、一瞬も目を離さず見守ることは不可能だ。在宅であれ、施設であれ、部屋に閉じ込めることなどできない。
この判決が前例になれば、ほかの事故でも損害賠償裁判で責任を問われる。亡くなる人は被害者でもある。家族だけに賠償を押しつけない、鉄道会社の責務や、社会的な救済制度が考えられるべきだ。保険料は運賃に上乗せし、事故の時は保険から支払われる仕組みがあってもいい。
認知症の事故は列車に限らず、自動車などでも起きる。事故による負担を社会全体で分かち合う、そんなシステムをつくりたい。